『古事記』が編纂された当時、各豪族にいろいろな昔の逸話があったと思います。その中で、イザナギとイザナミの神話が最初に選ばれた。『古事記』にはこのように書かれています。
【本文】
於是天神諸命以。詔伊邪那岐命伊邪那美命二柱神。
【解説】
天つ神の諸々の神が、イザナギとイザナミに国作りを委ねたとあります。このことを決めたのは、天つ神系氏族が大和朝廷政権の中枢にいたことが窺えます。そして、イザナギとイザナミが生んだアマテラスに繋げようとしたのです。天つ神の諸々の神とは大和朝廷の中枢にいた人達と解釈できます。中心人物は、藤原不比等です。
【私感】
 イザナギとイザナミのモデルは、女媧と伏羲の神話が元になっています。日本に道教が入ってきた時期、四世紀頃、その時に前漢で紀元前二世紀頃に編纂された『淮南子』も日本に入ってきていた。そこに、古代中国神話に出てくる女神、女媧が描かれ、洪水伝説では伏義とともに大洪水が起こり、ヒョウタンなどで作られた舟に乗って、女媧と伏羲、兄妹だけが生き残り、人類を作り出したことが書かれている。

 天つ神からイザナギとイザナミは最初の国生みを始めます。そしてできたのがオノゴロ島。
【本文】
修理固成是多陀用幣流之國。賜天沼矛而。言依賜也。故二柱神立。天浮橋而。指下其沼矛以畫者。鹽許袁呂許袁呂邇畫鳴而。引上時。自其矛末垂落之鹽。累積成嶋。是淤能碁呂嶋。
【解説】
イザナギとイザナミに対して、天つ神は漂っている国(日本)を修理して頑丈な国土に固めなさいと仰せられ、天の沼矛を授けられました。そして、高天原から繋がっている天の浮橋に立たれて、その鉄製の矛を下の方に降ろして、したたり落ちる塩で、オノゴロ島を作られました。これが最初の国生みで、淡路島から南に四・六キロ先に位置している沼島だと言われています。友が島とか淡路島北端の絵島という説もあります。
【私感】
 イザナギ・イザナギを主人公に描かれたこの神話には鉄器が登場し、オノゴロ島の次に国生みしたのがアワジノホノサワケの島、淡路島です。淡路島に鉄器製造工房の遺跡が五斗長垣内遺跡と舟木遺跡にあって、今からおよそ二世紀から三世紀に掛けての遺跡です。日本の鉄器製造工房では、淡路島の五斗長垣内遺跡と舟木遺跡壱岐島よりも古い徳島県阿南市加茂町の加茂ノ宮前遺跡からも鉄器製造工房が発見され、初期の鉄器製造工房では鉄器製品を大量に出土している長崎県壱岐島のガラカミ遺跡がある。加茂ノ宮前遺跡は縄文時代後期、紀元前二〇世紀から一〇世紀の集落も発見され、この集落から那賀川を下れば、徳島県阿南市の港と淡路島の間にはオノゴロ島(沼島)がある。この港から南下すれば紀伊半島の南端、熊野にも舟で行ける。地名からでも察しできるかも知れないが、ヤマト王権の豪族、加茂氏の出身地とも考えられる。
 加茂ノ宮前遺跡が縄文時代後期からも土器などの遺品が出土していることを考えると、鉄器製造工房を営んでいたのは縄文人とも考えられる。しかし、鉄器製造技術は朝鮮半島から、特に楽浪郡からもたらされてきた。そうすると、壱岐島のガラカミ遺跡の鉄器製造技術が瀬戸内海を経由して、徳島や淡路島に伝えられた。ガラカミ遺跡からの遺品を調べると土器に漢字が書き込まれていたり、食生活をその遺品から探ると魚骨や鯨の骨や貝殻が多く含まれていて、漁業を種にしていた住民だった。そんな海人系の人達が瀬戸内海を通って畿内にもで来ていたことが想像できます。日本海の出雲にも。そんな海人系の人達が中国の女媧・伏羲の神話も知っていた。

 イザナギとイザナミは兄妹の関係ではあるが、夫婦として子供を産みます。そして、最初に生まれたのが骨なしのヒルコでした。近親相姦の危険性を犯したのです。
【本文】
於其嶋天降坐而。見立天之御柱。見立八尋殿。於是問其妹伊邪那美命曰。汝身者如何成。答曰吾身者成成不成合處一處在。爾伊邪那岐命詔。我身者。成成而成餘處一處在。故以此吾身成餘處。刺塞汝身不成合處而。以爲生成國土生奈何。伊邪那美命答曰然善。爾伊邪那岐命。詔然者吾與汝行廻逢是天之御柱而爲美斗能麻具波比。如此云期。乃詔汝者自右廻逢。我者自左廻逢。約竟以廻時。伊邪那美命。先言阿那邇夜志愛袁登古袁。後伊邪那岐命言阿那邇夜志愛袁登賣袁。各言竟之後。告其妹曰女人先言不良。雖然久美度邇。興而。生子水蛭子。此子者入葦船而流去。次生淡嶋是亦不入子之例。
【解説】
イザナギとイザナミは、天ノ沼矛で作られたオノゴロ島に天の浮橋から降り立った。そして、天の柱で建てられた御殿に住まれた。ここから、イザナギとイザナミの性行為が始まる。イザナギがイザナミに尋ねた。「あなたの体はどのようにできているのか」するとイザナミは、「わたしの体は成りなりして、成り合わないところがあります」と答えた。これは女陰を表しています。そして、イザナギが「成り余っているところがある。そこで、あなたの成りなりに成り余っているのを刺しこんで国生みをしよう。生むことに異存がないか」と尋ねた。成り余っているところ、男根です。するとイザナミは、「それは楽しそう」と答えて了承した。それでイザナギは、「天の柱を使って、ミトノマグハヒをしよう」と言って、イザナミが右回り、イザナギが左回りに、そしてめぐり逢った。この場面は、イラストなどで、イザナギとイザナミが棒でかき混ぜている風景で表されています。そして、イザナミがまっ先に「なんて素敵な殿方よ」と言ってしまい、イザナミが性行為を先に求めてしまいます。女性が先に性行為を求めるのがよくなかったようで、生まれた子は骨なしのヒルコでした。その子は葦の舟に入れて流し捨ててしまった。その次に生まれたのがアワシマでその子は、子供の姿をなしておらず、胎盤が出てきた。その二人は子供の数に入れないこととなった。
【私感】
 この話は、大洪水が起きて女媧と伏羲の兄妹だけが生き残り、その後、子孫を増やしていく伝説を参考にしている。その他にも、男女が世の中で二人しかいない状況で兄と妹が性行為をする神話は、世界中でも語られています。旧約聖書の「ノアの方舟」もそうですね。イザナギとイザナミの神話でも親近相姦を戒めていますね。それと、同族との婚姻がよくないと言わんばかり。時代は違いますが、平安時代中期に編纂された『延喜式』には、天つ罪と国つ罪があり、その当時の民衆に対する法律です。この国つ罪に、己が母犯せる罪(母親との近親相姦を罰する罪)、己が子犯せる罪(実子との性行為の罰)、母と子と犯せる罪(ある女性と性交し、その女性の娘とも性交する罰)、子と母と犯せる罪(ある女性と性交し、その女性の母とも性交する罰)が古代から存在していたと記載されています。
 この近親相姦を古代からタブー視していたのですね。だから、徳島県阿南市の加茂ノ宮前の集落でも、舟を使って四国まで来た壱岐島の海人系の人達をも受け入れた。『古事記』は、単なる天皇家の出来事だけではないのです。イザナギとイザナミという神を使って、どのように国作りをしてきたか。それが『古事記』の本文に隠されています。

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