学生時代から日本史が好きで、社会人になってからもそれは変わりませんでした。機会があるごとに古代史の新書を読みました。その頃、歴史読本といえば、司馬遼太郎先生の本が書店に並び、ベストセラーになっていた時代です。でも、私はそのようなベストセラーになる本には目にも触れず、ひたすら古代史の新書派でした。大学生時代に読んだ梅原猛先生の『隠された十字架』の影響が大きかったと思います。一九八〇年代には黒岩重吾先生の『落日の王子 蘇我入鹿』もなかなか面白かった。
 古代史ブームが起きたのは、やはり「邪馬台国」の書籍が書店に並んだ頃。その火付け役が松本清張先生で、一九六八年に刊行された『古代史疑』からか。松本清張先生はアマチュアの立場から、専門家の対談もマスコミで話題になりました。その頃から、一般の方も邪馬台国論争に参加するようになりました。でも、私は「邪馬台国」や「卑弥呼」にはあまり興味を示しませんでした。中国では『魏国志』の三〇巻の内、列伝二六巻の中の烏丸鮮卑東夷伝に邪馬台国が記載されています。著者は、三国時代に蜀に仕え、魏の後を継いで中国を統一した西晋の司馬炎にその才能を買われた陳寿。陳寿は『呉国志』と『蜀国志』も執筆していて、後世にこの三つの書を『三国志』と言った。日本では『三国志』の「魏書」の烏丸鮮卑東夷伝を「魏志倭人伝」と言われ、大層重要視されていますが、著者の陳寿は呉について二〇巻、蜀について一五巻も書いているのに、魏については四巻しか書いてなくて、列伝ばかりなのです。陳寿は蜀出身で、西晋に抱えられたことから、魏の偉大さを強調するために列伝を多く書いたのでしょう。そんな著者が日本のことをどれだけ知っていたかは疑問だし、魏に対し、いや西晋に対して色目を使ったのではないかと疑える。『三国志』と言えば、吉川英治先生の小説を読んだ方が余程楽しい。
 中国の『三国志』はおおよそ二八〇年頃に書かれているので、「魏志倭人伝」に記載されている邪馬台国と卑弥呼については、二三八年から二四八年の十年間に魏と邪馬台国で交流があったことが記載され、その事自身は信憑性があるみたい。親魏倭王の金印や三角縁神獣鏡が出土されていますから。一方、この邪馬台国の女王と魏と交流が『日本書紀』巻第九神功皇后紀に記載され、その『日本書紀』では邪馬台国や卑弥呼の固有名詞は使われず、ただ女王のみ、年代は「魏志倭人伝」の年代とほぼ一致、それが神功皇后摂政三九年となっている。『日本書紀』巻第九神功皇后紀だけを見ると神功皇后イコール卑弥呼となる。実際、江戸時代まではそのように思われていました。でも、神功皇后は三韓征伐の出来事を考えると三〇〇年代後半から四〇〇年代前半の人物。
 『日本書紀』は天武天皇の六九一年に発案され、元正天皇の七二〇年に完成している。元々は欽明天皇の時代に天皇の正当性を示すために『帝王本紀』が編纂され、蘇我馬子が実権を持った推古天皇の時代に厩戸皇子(聖徳太子)と馬子が『天皇記』と『国記』が編纂され、蘇我氏によって保管されていた。その後、皇極天皇の時代に乙巳の変が起こり、蘇我入鹿が暗殺され、蘇我蝦夷の屋敷も焼かれ、『天皇記』と『国記』は焼失してしまった。そこで、『天皇記』と『国記』以外で残った『帝紀』・『旧辞』や『先紀』・『帝皇日嗣』など、皇室の系譜の伝承と焼失を逃れた歴史書や朝廷の書庫以外の歴史書を元に『日本書紀』が編纂された。だから、中国の『史記』『漢書』『後漢書』だけでなく、『三国志』の内容も詰め困れた。文体が漢文なので、中国や朝鮮を意識して編纂されたようです。また、『日本書紀』は『古事記』と違って、神話のエピソードが少なく、出雲神話も多く省かれています。その点、『古事記』の方が日本神話が含まれていて、素朴な日本の歴史を推理しやすい。『日本書紀』は、その当時の権力者(特に、藤原不比等)の意向の匂いがプンプンします。
 『日本書紀』と『古事記』の違いのもう一つの特徴は、文体が大和言葉を漢字に当てはめて書かれているところにあります。だから、読むには少し手こずる。漢文で書かれている『日本書紀』でも苦痛ですけれど、それ以上に。若い時から『古事記』を読みたいが、それが実現しませんでした。それが、三浦佑之先生の『口語訳 古事記』に出会ったときはどれだけ嬉しかったか。この本を読破したとき、三浦先生が述べられたように、「ふること(古事)」を支えていた人びとが語ろうとした世界に向き合うことができた喜びが。そして、ヤマト王権がどうやこうやではなく、現代生きている私達にもその当時の生き方が共感できる気になりました。
 これからのお話は正論ではなく、私の愚論になるかも知れません。読者の方にもそれぞれの考えがあると思いますが、お付き合いのほどよろしくお願いします。


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