第2章 潜移暗化 第4節

 たつやとさとしが出雲の話で一息終えたとき、ケイコがドアを開けた。
 「あけましておめでとうございます。」
 「ケイコさん、いいときに来たね。今、さとしくんと出雲の話をしていたところです。」
 「出雲。私、出雲大社に初詣をして帰って来たところです。」
 「へぇ、良縁を求めて、縁結びの神様にお参りしてきたのかい。」
 「いやだ。先生。先日、先生が教えてくださった吉備の米の話。一度調べようと思って、岡山に。そして、足を伸ばして出雲まで。」
 「何か、収穫がありましたか。」
 「これから、取材をまとめて先生に報告します。」
 ケイコが部屋に入ってきて賑やかになった。
 「出雲大社は、縁結びの神様としても有名ですけれど、ケイコさん、いい彼氏でもできたのかね。」
 「先生、いやぁ。そんな人いないですよ。」
 さとしは、ふと、出雲の神様が八十の神が集っていることに疑問をもった。
 「縁結びの神様。オオクニヌシの命は、私が知っているだけでも多くの姫と結ばれています。因幡の白兎のときに登場するヤカミヒメでしょ。オオクニヌシの正妻で、スサノオの命の娘のスセリビメでしょ。国譲りのときに出てくるタカムスビの娘のミホツヒメでしょ。その他にも、宗像三女神のタキリヒメも、高志の国のヌナカワヒメも。コトシロヌシの母のカムヤタテヒメも。オオクニヌシの命は、モテたんですね。それだけ、出雲には八十の神がたくさんいるということですか。」
 「神話は、文字のない時代に言い伝えによってできあがっていますから、主人公は統一され、時代ごとに付け加えられています。そして、天武天皇以降に編纂され、そこでも手が加えられていますからね。古代史を研究するものにとっては、厄介な代物であり、また、面白みもあります。八十の神が出雲に集結しているのも面白いですね。」
 「先生、私の考えでは、因幡の白兎でワニの背中を飛び台にして渡って来たウサギも中国からの渡来人で、オオクニヌシの命も。そして、オオクニヌシの命の兄弟、八十の神も中国からの渡来人ではないかと。」
 「その可能性はありますね。出雲には、一度に渡来人がやって来たのではなく、100年や200年のスパーンで、中国の違った地域から日本にやって来たのでしょうね。年代的に出雲を支配した実力者が他民族を征圧するたびに姫君を我が物にし、その実力者がすべてオオクニヌシの命として括られ、最終的にオオクニヌシの命という象徴的な神を崇める民族が出雲を支配したと思います。」
 「ヤマト王権が日本書紀や古事記で描いたスサノオの命の母方、イザナミも出雲の出身だと言われていますね。そして、スサノオの命は母方の国、出雲に行って同化したのかも知れませんね。」
 「オオクニヌシの命の国譲りの話以前、日本は一つの国ではなく、紀元前後には中国各地から渡来してきた人達が集落から小国家に。また、その頃の渡来人以前から日本に住んでいた人達も集落ごとに自治権を持っていて、戦い、侵略を繰り返し、娘の引き渡しのような人質同然の行為と共に国家として成長していった。出雲で縁結びの神と括っていますがその意味の中には、出雲政権が他民族を吸収していった歴史が隠されているかも知れませんね。」
 「先生、いろいろと出雲のヒントをお聞かせして頂いてありがとうございました。」
 「今日は、先生に出雲のお土産をお持ちしました。また、私の相談にものってくださいね。」
 「はい、ありがとう。ケイコさん、いつでも来なさい。」
 「ケイコさん、よいところに来たので。ちょっと、私に付き合ってもらいます。」
 「さとしさん、えぇ。」


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