第3部 大和朝廷樹立 第1章 決意
 
 大君アマツヒコヒコナギサタケウガヤフキアヘズの死後、高千穂宮で日向の国を治めていたのはイツセでした。イハレビコは一の宮で、鉄鉱石の採取と鉄器の生産に励み、日向の国の軍事力の強化に励んでいました。
 この頃、イハレビコの心の中には、山戸の国に行った時、ワニノカスガワケがイハレビコの祖先が周王朝の貴族の出であることを告げられたのが、頭の中から離れなかった。大君が一の宮に来られた時にその話を問いただしたのですが、大君は漢の国から渡って来たとしか告げなかった。
 現在、日向の国の高千穂宮の跡地に鹿児島神宮が存在し、創建は神武天皇の代とされ、主祭神は天津日高彦穂々出見尊(アマツヒコヒコホホデミ)、豊玉比売命(トヨタマヒメ)、帯中比子尊(仲哀天皇)、息長帯比売命(神功皇后)、品陀和気尊(応神天皇)、中比売尊(応神天皇の皇后ナカツヒメ)、姫大神(主祭神にかかわりのあるヒメの神)、太伯(紀元前千百年から紀元前千年頃の周王朝の初代武王の父文王の伯父に当たり、弟虞仲と呉の国を建国した人物)です。日本の神社で唯一、中国の人物が祀られているのが、鹿児島神宮なのです。
 天皇家の発祥地の鹿児島神宮で、周王朝の先代の古公亶父の子太伯を祀っている事は、やはり、中国の春秋時代に呉と越の国から日本に渡って来た民族が天皇家の祖先となるかも知れない。
 イハレビコは高千穂宮に行き、大君の時代に長老を務めたイグラを訪ねた。
 「若、よく来られた。」
 「イグラ様も、元気そうで何より。」
 「一の宮の方は、順調に進んでいますか。」
 「鉄器の生産は、計画通りに進んでいますが,鉄鉱石の採取が思うように行きません。」
 「それで、私のところに来られたのですか。」
 「いやぁ、イグラ様にお聞きしたことがあって。」
 「それはまた?」
 「私の祖先のことなのです。大君が生きておられた時に少し聞いたのですが、漢の国から来たそうなのですが、それ以上のことは教えてくれなかった。」
 「そうでしたか。私の祖先は、越の国から来たと言われています。その前は、かなり昔なので、はっきりしたことはわからないのですが、殷王朝の残党らしいのです。そうだ、私は、若のお祖父様(アマツヒコヒコホホデミ)の頃からお仕えしますが,若の祖先のことを聞かせてもらったことがあります。」
 「それは、どのように話だったのですか。」
 「はっきりは覚えてないので、確か周王朝に関係があるお方。思い出しました。太伯様だったように思います。」
 「イグラ様、よく思い出してくださいました。やはり、周王朝に関係があったのですね。」
 太伯は、殷王朝の末期に古公亶父の長男として生まれ、次男に虞仲、三男に季歴がいたが、季歴の子、昌(文王・紀元前千百五十二年~紀元前千五十六年)に家督を譲り、太伯と虞仲は荊蛮の人々と江蘇省蘇州で春秋時代の呉の国(紀元前五百八十五年~紀元前四百七十三年)の前身、句呉の国(紀元前千二百年頃~紀元前五百八十五年)を建国し、太伯には跡継ぎがいなかったため、句呉の国の国王は虞仲の子孫が跡を継いだ。また、日本の宮崎県の諸塚山に太伯が住んでいたという説話もある。太泊が天皇家の祖先とは言えないとしても、何かの関係があったことは、事実かも知れない。
 また、日本語には訓読みと音読みで呉音と漢音と唐音などがあり、その中で音読みとして古くから使われていたのが呉音で、この事からも、かなり早い時期から句呉の国から日本に渡って来たのではないでしょうか。この句呉の国の人々は、海での素潜りで魚を取るために、サメやフカに襲われないように刺青をする風習があったと言われています。現在の日本人にも刺青の風習が残っていますし、古事記にも、神武天皇がみそめたオホモノヌシの娘、ヒメタタライスケヨリヒメにオホクメが神武天皇の気持ちを伝えるため、そのヒメと会った時、オホクメの目の周りの刺青を見て、びっくりしたとある。神武天皇の時代に刺青をしていた人がいたことになります。
 イハレビコは、イグラに教えてもらった太伯のことを考えていた。もしかして、兄のイツセがお爺様から聞いているかも知れないと思った。そして、高千穂の宮にイツセを訪ねた。
 「兄上、兄上。」
 「どうした。イハレビコ。」
 「一の宮で、鉄器の生産に励んでいるのでは。」
 「今日は、兄上にどうしてもお聞きしたいことがあって、高千穂の宮まで来ました。」
 「それはまた。」
 「私達の祖先の話です。」
 「あぁ。山戸の国で聞いてきた話だな。その時に言っただろ。私は父上にあまり聞かされていないのだ。」
 「では、お爺様から太伯の話も聞かされていないのですか。」
 「太伯。」
 「太伯です。周王朝に関係がある。」
 「そう言えば、お爺様から小さいときに。私達は、漢の国から渡って来た太伯の子孫じゃと。」
 「もっと詳しいことは、聞かなかったのですか。」
 「小さいときの話だから、余り覚えていない。でも、漢の国のどこかの国王だったとか。」
 「やはり、周王朝に関係があった地方の国王だったのですね。
 「それがどうかしたのか。」
 「兄上、鉄器の生産は順調にいっていて、鉄器の武器もかなり出来上がってきました。でも、この頃、鉄鉱石があまり見つからないのです。」
 「では、これから、鉄器の生産も余りできなくなると言うことか。」
 「そうです。それで、この際、日向の国を出て、鉄鉱石が取れるところを探すか、私達が漢の国の国王筋に当たる正統な血筋とすると、私が若い頃旅した倭の国を目出して、勢力を伸ばし、娜国などを支配下に置きたい。そして、鉄鉱石や辰砂を我がものにしたいのです。」
 「それは。う~ん。そうだな。我々には、アマテラス様も付いておられるし。」
 イハレビコは、遂に我が身に何か詰まっていたものを吐き出したような気分になった。そして、この言葉をイツセに言ってしまったことによって、倭の国を目指し、イハレビコ達が日本の国で一番正統な血筋であり、この時代の乱れた国々を統一するために、日向の国から立ち上がったのです。
 「イハレビコ、分った。この事を皆に告げて、皆の気持ちを聞いてみよう。それまで、イハレビコは、一の宮で今後の戦略を考えておいてくれないか。」
 「分りました。兄上。」
 イハレビコは、十五歳の頃、伊勢の国に行き、アマテラス大御神にお会いし、そなたが、葦原の中つ国を治めるため、倭の国まで、東征してくるのなら、天つ神の統治者として、見守ってあげましょうとのお告げを賜ったことを思い出していた。そして、倭の国に東征し、葦原の中つ国を治めることを心に決めた。


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