第1部 草薙の剣 第2章 熊曾との争い
大君とタマヨリヒメとの間に四人の子が生まれた。その末っ子のイハレビコは、誕生後直ぐに久米部族のヨホトネに預けられることになる。養育係とし、タシトがあたった。霧島山系を走り回る、精錬活発で好奇心の旺盛な性格を備えた少年として成長していく。
「若君はどこじゃ。タシト探してまいれ。国の一大事じゃ。」
「若、ここに(高千穂峰の頂上)居られましたか。」
「タシトか。」
「若はここが好きですからな。」
「そうよ、あの山は桜島、海を隔てて種子島、そして屋久島じゃ。」
「そうです。そして、あの桜島から西の地方には熊曾(隼人)の集落があります。」
「我らの先祖も、あの島を渡り、この地に着いたのかな。」
「わたしの父が若を呼んでいます。急いでお帰りください。」
イハレビコがヨホトネのもとへ帰った時には、部族の主要メンバーが揃っていた。
「若、お待ちしていました。」
「大君の話では、ヤコメの集落に熊曾の兵が再三やって来て、ヤコメに熊曾に従うようにと脅しているらしい。そこで、熊曾と戦うべく出陣せよとのことだ。さらに、若君もこの戦に初陣せよとの仰せじゃ。」
「熊曾との戦か、われも戦おうぞ。」
ヨホトネとイハレビコらが高千穂の宮に着いた時には、各部族から兵が八十数名集まって来ていた。
「この度の戦は、日向の国の命運をかけての闘いだ。心してかかってほしい。総大将にはわが子イハレビコ、副大将にはヨホトネとする。今宵は宮で鋭気を休め、明日早朝に出発とする。」
その夜は大君をはじめ、家族が宮に揃った。
「イハレビコ、久しく会わぬうちに立派になったの。」
「大君におきましても、ご壮健でおられまして心よりお喜び申し上げます。」
「イナヒは幼少のころ亡くなり、ミケヌも病弱でな。そろそろ、宮に呼び戻して、イッセとともにわしの手助けをして欲しいのじゃ。」
「目に余るお言葉。感謝いたします。」
イハレビコも、十歳を超えた年になっていた。冬を越し、まだ寒さが残る早朝、イハレビコは軍の総大将として凛々しく、宮を出発していった。
昼過ぎにはヤコメの集落に着き、ヤコメが出迎えた。
「よくぞ来て頂いた。お疲れでしょう。この度の出陣、心より感謝しています。」
「われらが来た以上、熊曾など目ではないわ。」
「詳しくは、奥でお話しましょう。」
ヤコメは、ヨホトネ、イハレビコ、タシトらを庵に案内した。
「大君にもお話しましたが、南の福島川の水源争いで、わが集落を兵力で脅し、わが田園を奪おうとしています。」
「ヤコメよく分かった。若君に何か策があればお聞かせください。」
「ヤコメ、南に小高い鹿久山があったな。その山に見張りを置いてほしいのだ。」
「若、見張りを置いて熊曾の出方を探るのでな。」
「ヨホトネ、鹿久山の麓の大平川付近に砦を築くのじゃ。そして、敵が攻めて来たら鹿久山から烽火を上げ、その烽火を合図に弓矢を持って、川を渡って来る敵めがけて矢を放すのじゃ。」
「さすがわ、若君じゃ。タシトそのように手はずしろ。」
ヤコメは部族の気転のきく若手の二人に焚き木を持たせて、見張りに当たらせた。タシトも大平川の川辺に陣を置き、砦を築き、川の沿岸に丸太で柵を張った。イハレビコとヨホトネは砦が完成してから陣に加わった。
イハレビコは完成した砦に満足そうにしていた。その様子を見たヨホトネが声を掛けた。
「若、これで熊曾と戦えますね。」
「ヨホトネ、でかした。}
「それにしても、若がこんな要所をご存知とは。」
「われはこの日向の国の隅々まで知っておるぞ。タシトを連れて馬で走り廻ったから。わが国以外の国にも見てみたいものだ。」
そして、イハレビコは熊曾の様子を探るようにヨホトネに命じた。
ヨホトネは熊曾に詳しいカサリを呼び、熊曾に探りを入れた。三日程して、カサリが帰って来た。
「若君、熊曾は軍を整えて今にもこちらに向かおうとしています。」
鹿久山から烽火が上がった。弓矢を持った兵が配置に着き、大平川を渡って来る熊曾の兵めがけて矢を放した。イハレビコの指示通りに事が運び、熊曾との戦いに勝利した。その後、砦で熊曾の出方をうかがっていた時、鹿久山の見張りから伝令がきた。白旗を持って、こちらに向かって来るとのことである。
砦にやって来たので、ヨホトネが出迎えて、庵に案内した。
「この度の敗戦を認め、今後は福島川の水源を荒らすことはいたしません。」
「その証しとなるものがあるか。」
「ここにいます、オヨリ君を人質に差し出しますのでよろしくお願いいたします。」
熊曾の戦に勝利したイハレビコらの軍は、ヤコベの集落に戻り、人質をヤコメに預けて高千穂の宮に帰還した。
「大君、今回の戦で若君の作戦にヨホトネ感服いたしました。」
「そうか、ヨホトネもご苦労であった。」
「イハレビコ、今回の戦の褒美に何か所望があれば言ってみなさい。」
「母の国、豊の国をみとうございます。」
「よかろう、タシト同行せよ。」
「若君はどこじゃ。タシト探してまいれ。国の一大事じゃ。」
「若、ここに(高千穂峰の頂上)居られましたか。」
「タシトか。」
「若はここが好きですからな。」
「そうよ、あの山は桜島、海を隔てて種子島、そして屋久島じゃ。」
「そうです。そして、あの桜島から西の地方には熊曾(隼人)の集落があります。」
「我らの先祖も、あの島を渡り、この地に着いたのかな。」
「わたしの父が若を呼んでいます。急いでお帰りください。」
イハレビコがヨホトネのもとへ帰った時には、部族の主要メンバーが揃っていた。
「若、お待ちしていました。」
「大君の話では、ヤコメの集落に熊曾の兵が再三やって来て、ヤコメに熊曾に従うようにと脅しているらしい。そこで、熊曾と戦うべく出陣せよとのことだ。さらに、若君もこの戦に初陣せよとの仰せじゃ。」
「熊曾との戦か、われも戦おうぞ。」
ヨホトネとイハレビコらが高千穂の宮に着いた時には、各部族から兵が八十数名集まって来ていた。
「この度の戦は、日向の国の命運をかけての闘いだ。心してかかってほしい。総大将にはわが子イハレビコ、副大将にはヨホトネとする。今宵は宮で鋭気を休め、明日早朝に出発とする。」
その夜は大君をはじめ、家族が宮に揃った。
「イハレビコ、久しく会わぬうちに立派になったの。」
「大君におきましても、ご壮健でおられまして心よりお喜び申し上げます。」
「イナヒは幼少のころ亡くなり、ミケヌも病弱でな。そろそろ、宮に呼び戻して、イッセとともにわしの手助けをして欲しいのじゃ。」
「目に余るお言葉。感謝いたします。」
イハレビコも、十歳を超えた年になっていた。冬を越し、まだ寒さが残る早朝、イハレビコは軍の総大将として凛々しく、宮を出発していった。
昼過ぎにはヤコメの集落に着き、ヤコメが出迎えた。
「よくぞ来て頂いた。お疲れでしょう。この度の出陣、心より感謝しています。」
「われらが来た以上、熊曾など目ではないわ。」
「詳しくは、奥でお話しましょう。」
ヤコメは、ヨホトネ、イハレビコ、タシトらを庵に案内した。
「大君にもお話しましたが、南の福島川の水源争いで、わが集落を兵力で脅し、わが田園を奪おうとしています。」
「ヤコメよく分かった。若君に何か策があればお聞かせください。」
「ヤコメ、南に小高い鹿久山があったな。その山に見張りを置いてほしいのだ。」
「若、見張りを置いて熊曾の出方を探るのでな。」
「ヨホトネ、鹿久山の麓の大平川付近に砦を築くのじゃ。そして、敵が攻めて来たら鹿久山から烽火を上げ、その烽火を合図に弓矢を持って、川を渡って来る敵めがけて矢を放すのじゃ。」
「さすがわ、若君じゃ。タシトそのように手はずしろ。」
ヤコメは部族の気転のきく若手の二人に焚き木を持たせて、見張りに当たらせた。タシトも大平川の川辺に陣を置き、砦を築き、川の沿岸に丸太で柵を張った。イハレビコとヨホトネは砦が完成してから陣に加わった。
イハレビコは完成した砦に満足そうにしていた。その様子を見たヨホトネが声を掛けた。
「若、これで熊曾と戦えますね。」
「ヨホトネ、でかした。}
「それにしても、若がこんな要所をご存知とは。」
「われはこの日向の国の隅々まで知っておるぞ。タシトを連れて馬で走り廻ったから。わが国以外の国にも見てみたいものだ。」
そして、イハレビコは熊曾の様子を探るようにヨホトネに命じた。
ヨホトネは熊曾に詳しいカサリを呼び、熊曾に探りを入れた。三日程して、カサリが帰って来た。
「若君、熊曾は軍を整えて今にもこちらに向かおうとしています。」
鹿久山から烽火が上がった。弓矢を持った兵が配置に着き、大平川を渡って来る熊曾の兵めがけて矢を放した。イハレビコの指示通りに事が運び、熊曾との戦いに勝利した。その後、砦で熊曾の出方をうかがっていた時、鹿久山の見張りから伝令がきた。白旗を持って、こちらに向かって来るとのことである。
砦にやって来たので、ヨホトネが出迎えて、庵に案内した。
「この度の敗戦を認め、今後は福島川の水源を荒らすことはいたしません。」
「その証しとなるものがあるか。」
「ここにいます、オヨリ君を人質に差し出しますのでよろしくお願いいたします。」
熊曾の戦に勝利したイハレビコらの軍は、ヤコベの集落に戻り、人質をヤコメに預けて高千穂の宮に帰還した。
「大君、今回の戦で若君の作戦にヨホトネ感服いたしました。」
「そうか、ヨホトネもご苦労であった。」
「イハレビコ、今回の戦の褒美に何か所望があれば言ってみなさい。」
「母の国、豊の国をみとうございます。」
「よかろう、タシト同行せよ。」
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